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親なき後の備えとは?障害のある子の生活・お金・住まいの準備と相談先を解説


2026年07月24日

「自分たちがいなくなったら、この子はどうなるのだろう」――障害のあるお子さんを育てるご家族にとって、これはもっとも切実な問いかもしれません。実際、障害のある人の家族を対象にした全国調査では、「親なきあと」に不安を感じている家族は85.5%にのぼり、重度の知的障害がある方の家族では92.5%と、ほぼすべてのご家族が将来への強い不安を抱えていることがわかっています。

一方で、何から手をつければよいか分からず準備が進まないご家庭も少なくありません。けれども「親なきあと」の備えは特別なことばかりではなく、親御さんがお元気な「親あるうち」にこそできることがたくさんあります。この記事では、生活・お金・住まいという3つの視点から、今からできる準備と相談先をわかりやすく整理してお伝えします。

悩んでいる女性

「親なきあと」問題とは

家族が支援できなくなった後に生じる生活の課題

「親なきあと」問題とは、障害のあるお子さんを支えてきたご家族(親やきょうだいなど)が、高齢化・病気・死亡などによって支援を続けられなくなった後に、ご本人の生活が不安定になりかねないという課題の総称です。

日々の暮らしの中で、ご家族は本人にとって「もっとも身近な理解者」であり、生活のサポートからお金の管理、契約の手続き、体調の見守りまで数えきれない役割を担っています。その家族が支えられなくなったとき、本人を理解して判断を手助けする人や身の回りの世話をする人がいなくなり、契約や手続きの困難、悪質商法・財産トラブルのリスク、住む場所の問題などが一度に立ち現れます。

日本財団が2026年に公表した調査でも、ご家族が求める支援は「公的な給付金・助成制度」(59.2%)や「将来の生活設計を一緒に考えてくれる専門的な相談窓口」(55.2%)が上位を占めています。とりわけ重度の知的障害がある方の家族では、「住まいの選択肢の拡充」を求める声が67.6%と最も高くなっており、安心して暮らせる住まいへのニーズの強さがうかがえます。つまり「親なきあと」は、生活・お金・住まいが複雑に絡み合った課題なのです。

早めに備えることの大切さ(先送りのリスク)

「まだ元気だから」「考えるのがつらいから」と先送りにしたくなる気持ちは自然なものです。しかし備えを先延ばしにすると、いざというときに選べる選択肢が狭まってしまうことがあります。成年後見制度や信託のように本人・家族の意思を反映させて準備する仕組みは、家族が元気で本人と十分に話し合える「今」だからこそ整えやすいものです。先述の調査でも、準備が進みにくい背景として「将来の生活にいくら必要か見当がつかない」「どのような制度や選択肢があるか分からない」といった情報不足が課題に挙げられています。

裏を返せば、制度や選択肢を知り、相談先とつながっておくだけでも不安の多くはやわらいでいきます。完璧な計画を一度に立てる必要はなく、できることから少しずつ始めることが、いちばんの備えになります。

親なきあとに備える3つの視点

【生活面】本人の「生きる力」を育てる

意外に見落とされがちですが、もっとも根本的な備えは、本人自身が「自分で暮らしていく力」を少しずつ身につけることです。お金や制度を整えても、本人が困ったときに相談できたり身の回りのことを自分なりにこなせたりする力があるかどうかで、その後の暮らしの安定は大きく変わります。

生活リズムを整える、家事や金銭管理に慣れる、人との関わり方を学ぶ、自分の特性や困りごとへの対処法を知る――こうした「生活する力」は一朝一夕では身につきません。だからこそ、親御さんがそばで見守れる「今」のうちに育てていくことが何よりの備えになります(記事後半で、自立訓練(生活訓練)という選択肢とあわせて詳しくご紹介します)。

【お金の面】財産管理・経済的な備え

本人がこの先生活していくためのお金をどう確保し、どう管理していくかも大きなテーマです。障害年金などの収入の確保、親の財産の残し方・管理の仕方、契約や財産を本人に代わって守る仕組みなど、成年後見制度や信託といった公的・私的な備えがあります。

【住まいの面】暮らしの場の選択肢

親元を離れた後、どこで暮らすかも重要です。一人暮らし、グループホーム、施設入所など、本人の状態や希望に合わせて複数の選択肢があり、それぞれに支援の手厚さや費用が異なります。早めに見学・相談しながら、本人に合う暮らしの場を探していきましょう。

お金の備え:制度と仕組み

成年後見制度(法定後見・任意後見)

判断に不安のある本人に代わって財産管理や契約などの法律行為を支援する公的な仕組みが「成年後見制度」です。すでに判断能力が低下している場合に利用する「法定後見」と、判断能力があるうちに将来へ備えて契約しておく「任意後見」の2つに分かれます。

法定後見は、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型が用意され、家庭裁判所が選んだ成年後見人等が本人を支援・保護します。申立ては本人や配偶者、四親等内の親族のほか、身寄りがない場合などには市町村長も行えます。後見人等には親族のほか、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が選ばれることもあります。

任意後見は、本人に判断能力があるうちに「将来サポートしてほしい内容」と「任せたい人」を自分で決めて契約しておく仕組みで、「親なきあと」に備えたいご家庭にとって検討する価値があります。なお、成年後見制度の所管は法務省で、具体的な手続きは家庭裁判所が担います。

障害年金・各種手当

障害年金は、病気やけがで生活や仕事に制限が生じたときに支給される公的年金で、「親なきあと」の生活を支える柱の一つです。国民年金加入者などが対象の「障害基礎年金」(1級・2級)と、厚生年金加入者が対象の「障害厚生年金」(1級・2級・3級)があります。

障害基礎年金の金額は定額で、毎年度改定されます。令和8年度(2026年度)の額は、昭和31年4月2日以後生まれの方の場合、2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円で、これに「子の加算」が加わる場合があります。なお、20歳になる前に初診日がある方には、20歳前の傷病による障害基礎年金の仕組みもあります。金額や受給要件は改定・見直しがあるため、最新の情報は日本年金機構や年金事務所でご確認ください。

このほか、自治体によっては各種手当や、障害のある子を持つ保護者が万一に備えて加入する「心身障害者扶養共済制度」などの仕組みもあります。内容や金額は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の窓口で確認しましょう。なお、障害年金は障害者手帳とは別の制度で、手帳の等級と年金の等級は必ずしも一致しません。違いは障害者手帳の種類(障害年金との違い)もあわせてご覧ください。

信託・生命保険などの選択肢(専門家に相談を)

親の財産を本人のために計画的に残し・管理していく方法として、信託(財産を信頼できる人や機関に託して管理・給付してもらう仕組み)や生命保険の活用もあります。これらは商品・契約の内容が多岐にわたり、税金や法律にも関わるため、ご家庭の状況により最適な形は大きく異なります。

本記事は法律・金融に関する助言を行うものではありません。信託や保険を検討する際は、弁護士・司法書士・税理士や金融機関など信頼できる専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

住まいの備え:暮らしの場の選択肢

グループホーム(共同生活援助)とは・支援内容

親元を離れた後の住まいとして、まず候補になるのが「グループホーム」です。正式には「共同生活援助」といい、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。数人の利用者が一軒家やアパートなどで共同生活を送りながら、「世話人」や「生活支援員」から食事・入浴・排せつなどの日常生活上の支援や相談を受けられる「住まいの場」です。

グループホームには、主に「介護サービス包括型(介護を事業所が提供)」「外部サービス利用型(介護を外部の事業者に委託)」「日中サービス支援型(常時介護が必要な方に昼夜を通じて支援)」の類型があり、本人の状態や必要な支援に応じて選びます。共同生活住居の定員は原則2人以上10人以下で、住宅地など地域住民との交流の機会が確保される環境に置くことが求められています。

どのような暮らしの場が本人に合うかは、障害の特性や希望によって変わります。障害福祉サービスの全体像については障害福祉サービスの種類もご参照ください。

施設入所・在宅など他の選択肢

住まいの選択肢はグループホームだけではありません。常時の介護が必要な場合の「施設入所支援」、支援を受けながらの「一人暮らし」、ご家族と暮らし続ける「在宅」など、状況に応じて複数の道があります。近年は、グループホームや施設から一人暮らしへの移行を支える「自立生活援助」など、地域で暮らし続けるための支援も整えられてきています。

住まいは生活の土台になります。見学や体験、相談を重ねながら、早めに情報を集め、複数の選択肢を比べておくと安心です。

親なきあとを相談できる窓口

「何から準備すればいいか分からない」というときは、一人で抱え込まず、まず相談窓口につながることが大切です。専門の窓口は、制度の説明だけでなく、本人に合ったサービスや備えを一緒に考えてくれます。

「親なきあと」相談室・相談支援事業所

身近な相談先として、まず知っておきたいのが「相談支援事業所」です。相談支援事業所では、障害福祉サービスの利用に関する相談に応じ、本人の希望に沿った支援計画(サービス等利用計画とは)を作成し、定期的に見直しながら暮らしを支えてくれます。この計画の作成に利用者の費用負担はかかりません。

また、近年は各地に「親なきあと相談室」といった、将来の備えに特化した相談の場も広がっています。お金・住まい・契約など分野をまたいだ相談に対応するところもあり、漠然とした不安を具体的な準備に変えていく第一歩として活用できます。

弁護士・司法書士・社会福祉士など専門職

成年後見・遺言・信託といった法律や財産に関わるテーマでは、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が力になります。成年後見制度では、これらの専門職が後見人等に選ばれることもあります。どの専門家に相談すればよいか分からないときは、まず相談支援事業所や自治体の窓口に相談し、必要に応じて専門職につないでもらうとスムーズです。

さいたま市・埼玉県の相談先

さいたま市には各区に「障害者生活支援センター」が設置されており、障害のある方やご家族からのさまざまな相談に応じています。通常の相談に加えて、障害者総合支援法に基づく計画相談支援として、サービス利用計画案の作成も行っています。メルディアライフネスト浦和のある浦和区を含め各区にセンターが置かれ、身近な窓口を見つけやすいのも地域の強みです。どこに相談すればよいか迷ったときは、お住まいの区の障害者生活支援センターや、市・区役所の障害福祉担当窓口がよりどころになります。

本人の「生活力」を今から育てるという備え

ここまで、お金・住まい・相談先という「環境を整える備え」を見てきました。最後に、もっとも根本的な備え――本人自身の「生活する力」を、親御さんが元気な今のうちに育てるという視点をお伝えします。

自立訓練(生活訓練)で生活スキル・対人スキル・自己理解を育てる

「自立訓練(生活訓練)」は、障害のある方が地域で自立した生活を送れるよう、生活能力の維持・向上のための訓練や相談・支援を行う障害福祉サービスです。生活リズムを整える、家事や金銭管理を身につける、人との関わり方を学ぶ、自分の特性や対処法を理解するといった「暮らしの土台」を段階的に育てていきます。

利用できる期間は標準で2年間(長期間入院していた方などは3年間)と定められています。また、かつては対象が知的・精神障害に限られていましたが、平成30年(2018年)4月の制度改正により、障害種別の区別なく利用できるようになりました。利用には障害福祉サービス受給者証が必要ですが、障害者手帳がなくても自治体の判断で利用できる場合があります。なお、似た名前の「自立訓練(機能訓練)」は主に身体機能のリハビリを行うサービスで、生活訓練とは目的が異なります。

「親なきあと」を見据えるなら、本人が自分の力で暮らし、困ったときに相談できる力を育てておくことは、何にも代えがたい備えになります。仕組みの詳細は自立訓練(生活訓練)とはをご覧ください。

メルディアライフネスト浦和でできること

さいたま市浦和区にある自立訓練(生活訓練)事業所「メルディアライフネスト浦和」は、まさにこの「本人の生活力を今から育てる」ことを支える場です。独自の評価・支援の仕組みを通じて、生活リズム・対人関係・自己理解をていねいに育てていきます。

まず、利用開始時には独自の生活能力評価「EQS」を用いて、「心のしなやかさ」「コミュニケーション能力」「困難に立ち向かう力」の3つの軸から本人の状態を把握します。その結果をもとに、マンツーマンのオーダーメイドプログラム「S.I.P(Self-Insight Program)」で、自己理解を深めながら、豊かな社会生活に向けて症状への対処法を身につけていきます。

支援は、次の10のプログラムを組み合わせて進めます。日々の生活全般を整える①ライフプログラム、実際の生活場面を想定して練習する②ライフシミュレーショントレーニング、対人スキルを段階的に学ぶ③SST(ソーシャルスキルトレーニング)、思考の偏りに気づき行動を変えていく④集団認知行動療法、遊びを通して他者とのコミュニケーションを学ぶ⑤コネクトプログラム、少人数でテーマを話し合い結論を導く⑥グループワーク、絵や音楽・手作業で自己表現と達成感を得る⑦クリエイティブタイム、軽運動で体調管理や気分の切り替えを図る⑧フィジカルプログラム、基本操作やOfficeソフトの習得を目指す⑨ITスキル、社会生活に役立つ情報を個別に学ぶ⑩CSP(e-learning)です。一人ひとりの状態に合わせ、必要なものを組み合わせながら進めます。

さらに、2年間の歩みを「リービングネストプログラム」という4段階で組み立てています。生活リズムを整える基礎ステージ(3〜6か月)、経験を重ねる体験ステージ(6か月)、進路を探求する探求ステージ(3か月)、進路に向けて歩みだす始動ステージ(6か月)という流れです。個別支援計画はおおむね3か月ごとに見直し、本人の変化に合わせて柔軟に調整していきます。

支援を支えるのは、看護師・臨床心理士・精神保健福祉士・社会福祉士という専門資格をもつスタッフ陣です。健康面・心理面・福祉面を多角的に支えられる体制は、ご本人にもご家族にも安心材料になります。

メルディアライフネスト浦和では、2年間で就職や進学に向かう生活力を身につけることを基本とし、自立訓練の枠組みの中で就職活動のサポートまで一貫して行えることが大きな強みです。進路は「自立訓練から一般就労」を基本の流れとしつつ、就職までにもっとトレーニングを積みたい方には、グループ内の就労移行支援「メルディアトータルサポート」へスムーズに支援情報を引き継げる、次のステップとしての選択肢も用意されています。親御さんがお元気なうちに本人の生きる力を育てておくこと――それが「親なきあと」への、もっとも前向きな備えになるはずです。

親なきあとに関するよくある質問

Q. 「親なきあと」の準備は、いつから始めればよいですか?

早ければ早いほど安心です。任意後見や信託など本人・家族の意思を反映させる仕組みは、家族が元気で本人と十分に話し合える「今」のうちに整えやすいものです。まずは相談支援事業所など身近な窓口に相談することから始めてみましょう。

Q. 本人に判断の不安があり、契約や財産管理が心配です。どうすればよいですか?

判断に不安がある方を支える公的な仕組みとして、成年後見制度があります。判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の類型があり、家庭裁判所が選んだ後見人等が本人を支援します。判断能力があるうちに備える「任意後見」という方法もあります。

Q. 親なきあとに、本人の生活費はどう確保できますか?

障害年金が生活を支える柱の一つになります。障害基礎年金は令和8年度(2026年度)で2級が年額847,300円、1級が年額1,059,125円(昭和31年4月2日以後生まれの場合)などと定められています。自治体の手当や扶養共済制度もあるため、窓口で確認しながら収入と支出を早めに見通しておくと安心です。

Q. きょうだいに負担をかけすぎないか心配です。

役割を一人に背負わせないためにも、早めに相談窓口や公的な仕組みとつながり、家族以外の支え手を増やしておくことが大切です。本人が自分で暮らし、相談できる力を育てておくことも、結果的にきょうだいの負担を軽くします。

まとめ

「親なきあと」への備えは、生活・お金・住まいの3つの視点で整理すると考えやすくなります。お金の面では成年後見制度や障害年金、住まいの面ではグループホームなどの選択肢があり、迷ったときは相談支援事業所やさいたま市の障害者生活支援センターといった窓口が力になってくれます。そして、もっとも根本的な備えは、本人自身の「暮らす力」を親御さんが元気な今のうちに育てておくことです。その土台づくりを支える選択肢の一つが、自立訓練(生活訓練)です。お子さんの将来や進路を考え始めたら、障害のある子供の進路相談もあわせてご覧ください。

不安をすべて一度に解消する必要はありません。制度を知り、相談先とつながり、できることから少しずつ。その一歩一歩が、ご本人とご家族の「これから」を支える確かな備えになります。

メルディアライフネスト浦和では見学・無料相談を受付中です。お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ:https://mlda.jp/mlninquiry/

この記事はメルディアライフネスト浦和のスタッフが監修しています。

出典一覧

※1 日本財団「障害者の『親なきあと』に関する意識・実態調査」(調査報告書)

https://www.nippon-foundation.or.jp/wp-content/uploads/2026/02/new_inf_20260210_01.pdf

※2 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A(Q3〜Q15 法定後見制度について)」

https://www.moj.go.jp/MINJI/a02.html

※3 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」(令和8年4月分から)

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html

※4 埼玉県「共同生活援助(グループホーム)の基準 概要」

https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/32595/ghkijungaiyo0603.pdf

※5 厚生労働省「自立訓練(機能訓練・生活訓練)に係る報酬・基準について(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料)」

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000670106.pdf

※6 さいたま市「障害者生活支援センター」

https://www.city.saitama.lg.jp/002/003/004/003/005/p002725.html

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